ポケモンロードS
パラレルシティ・サトシのガレージ
時刻はもうすぐ午前6時。サトシはまだぐっすり眠っている。
すると…ドアをノックする音が聞こえてくる。
ピカチュウ「ピ？ピカピ！」
それに気づいたのは物音に敏感なピカチュウ。
ピカチュウはサトシを起こすが…まだ起きない！
ピカチュウ「チュウウウウ！！」
するとピカチュウは電撃を放つ！
サトシ「おわ！？っっっ…なんだよ…ん？」
電撃で叩き起こされたサトシはようやくノックに気付く。
サトシ「はーい、今出ますよーっと。」
サトシがドアを開けるとそこにいたのは…
サトシ「あなたは治安維持局の…ケーシさん？」
ケーシ「やあ。朝早くすまないね。実は君に頼みたいことがあるのだが…」
第24話 エーテル財団
パラレルシティ治安維持局ビル食堂
サトシ達はケーシにおごってもらった朝食を食べながら話をしている。
サトシ「それで頼みってなんですか？」
ケーシ「君は…ノースエリア『ギャングポケモン』は知っているか？」
サトシ「ギャングポケモン？いえ、知らないですね…」
ケーシ「ここ最近ノースエリアで野生ポケモンが人を襲う事件が多発している。食べ物を奪ったりすることからギャングポケモンと呼ばれているんだ。」
サトシ「そんな事件が。もしかしてそいつをやっつけて欲しいって話ですか？」
ケーシ「いや、やっつけるのではなく…」
「保護しようと我々は考えております！」
サトシ「えーっと？あなたは…」
会話に割り込んできたのは白いユニフォームを着た10代後半の男性。
「私はエーテル財団パラレルシティ支部長のビーンと申します。」
サトシ「エーテル財団？」
ビーン「ポケモンの保護を目的とした団体です。本拠地はアローラ地方ですが、このパラレルシティでも捨てられたポケモンや行き場を無くしたポケモンの保護活動を行っております。」
サトシ「へえ…ポケモンの保護か。」
ビーン「ですが我々だけでは保護できるポケモンにも限界があります。そこで治安維持局の皆様の力を借り、ギャングと呼ばれているポケモン達を保護しようというわけです。」
ケーシ「で、凶暴なポケモンギャングに対抗するため、トレーナーとしての実力のある君を呼び寄せた。」
サトシ「なるほど。でもなんでゴウショウさんじゃなくて俺なんですか？」
ケーシ「ゴウショウは今日パラレルにいないようでな。それに…この前の事件でもゴローニャを傷つけずに助けた君は適任だと思ってね。」
ビーン「では朝食後に向かいましょう！」
パラレルシティノースエリア
サトシ「この辺は…随分寂れてるな…」
ケーシ「ノースエリアの中でもこの近辺はまだ開発が進んでいないからな。治安も都市部と比べて悪いから住む人も少ない。」
ビーン「ですが人が少ない分、野生ポケモンは住みやすいようですね。本当は彼らをそっとしておきたいところなのですが…」
ケーシ「被害が出ている以上そういう訳にもいかないな。」
「きゃー！！」
近くで悲鳴が聞こえてくる！
サトシ「早速か！？」
ビーン「行きましょう！」
悲鳴が聞こえてきた方へ向かうと…おばあさんが倒れていた！
おばあさん「いたた…」
サトシ「大丈夫ですか？」
おばあさん「うーん…身体が痛いねえ…」
ビーン「何があったのですか？」
おばあさん「いきなり吹っ飛ばされて…あら？さっき買った食料が無い！？」
サトシ「ポケモンギャングか！」
ビーン「どっちに行ったか分かりますか？」
おばあさん「あっちの方だったかしら…」
おばあさんは北の方を指差す。
ケーシ「よし、私はこのおばあさんの手当てをする。君たちはポケモンギャングを探してくれ！」
サトシ・ビーン「はい！」
おばあさんが指差した方へ向かうサトシ達。
サトシ「どこに行ったんだろう？」
ビーン「私に考えがあります！キュワワー！」
ビーンはボールからポケモンを繰り出す！
サトシ「そいつは？」
ビーン「フェアリータイプのポケモン・キュワワーです。キュワワー！あまいかおり！」
キュワワーは周囲にあまいかおりを放つ！すると…
「クーン…」
サトシ「ポケモンが寄ってきた！しかもレジ袋を持ってるということは…」
ビーン「恐らくおばあさんを襲ったポケモンでしょう。襲った原因はお腹を空かせていることだと予想し、あまいかおりで引き寄せてみましたが、うまく行きましたね。」
サトシ「やるな！」
ビーンはバッグの中からきのみをたくさん取り出す。
ビーン「これをお食べ。」
「クーン」
ポケモンはきのみを美味しそうに食べる。
その間にキュワワーは食べ物の入ったビニール袋を回収する。
サトシ「ところでこのポケモンは？」
ビーン「ヌイコグマです。かわいい見た目からペット用に人気があるのですが…」
ヌイコグマ「クン！」
ヌイコグマは走っていく！
サトシ「あ、もう食べ終わった！」
ビーン「恐らくこれから住みかに戻るのでしょう。追いかけましょう！」
ヌイコグマを追いかけるサトシ達。すると…
「ちょっと待ちな！」
現れたのはいかにも悪そうな雰囲気の不良3人組。
不良1「この辺りは俺たちの縄張りだ。」
不良2「通りたければ金目の物を置いていきな！」
サトシ「治安悪いとは聞いてたけどこんな奴もいるんだ…」
ビーン「ここはあなた達の私有地なのですか？」
不良3「私有地？なにそれ？」
不良1「とにかくここは俺たちの縄張りなんだぜ！」
ビーン「どうやら勝手に占拠しているだけのようですね。」
サトシ「だったら早くどいてくれ！」
不良2「断る！金目の物を置いていかないなら…」
不良3「力ずくで奪い取る！」
不良1「やれ！マケンカニ！バブルこうせん！」
不良2「ヒドイデ！どくばり攻撃！」
不良3「ヤトウモリ！りゅうのいかり！」
不良達はポケモンを繰り出してすぐに攻撃する！
サトシ「ピカチュウ！10まんボルト！！」
サトシの肩に乗っていたピカチュウはすぐに攻撃体勢に入る！
3体の攻撃を押し返して10まんボルトが炸裂！
不良3「な、なに！？」
不良2「こいつ…強い！」
不良1「ここは撤収だ！覚えていろよー！」
不良達は走って逃げ出す！
ビーン「たった1回の攻撃で3体まとめて倒すとは…サトシもやりますね！」
サトシ「ありがとう。さ、行こうぜ。」
サトシ達がたどり着いたのは…とある倉庫。
サトシ「使われていない倉庫…ここが住みかなのか？」
「グルオオオオオオオオオ！！」
倉庫の奥からうなり声が聞こえてきた！
そこにいたのはヌイコグマに似た大型のポケモンだ！
サトシ「あいつは…」
ビーン「キテルグマ！ヌイコグマの進化系です。」
キテルグマの周りにはヌイコグマ達がいる。
ヌイコグマ「クーン！クーン！」
キテルグマ「グルル！」
サトシ達に近づこうとするヌイコグマを抑え、キテルグマが近づいてきた！
ビーン「キテルグマ！私はエーテル財団のビーン！あなた達を保護したいと考えています！」
キテルグマ「グルル…」
ビーン「あなた達はこの近くにいる人を襲って食料を得ているようですが、それでは多くの者達が傷ついてしまいます。ですが我々ならあなた達の食料を供給し、次の生活の場を与えることができるのです。さ、一緒に…」
キテルグマ「グルオオオオ！！」
キテルグマが襲いかかってきた！
サトシ「話は通用しないか！？」
ビーン「キュワワー！あまいかおり！！」
キュワワーはあまいかおりを放つ！
ビーン「興奮状態のようですね。ですがあまいかおりを嗅げば少しは落ち着いて…」
キテルグマ「グオオオオオ！！！」
キテルグマははかいこうせんをキュワワーに放つ！
キュワワー「キュワー！」
ビーン「キュワワー！」
サトシ「く！戦いしかないか！ヌメルゴン！」
サトシはドラゴンタイプのポケモン・ヌメルゴンを繰り出す！
ビーン「ダメです！攻撃しては！」
サトシ「でも！」
ビーン「このキテルグマ…恐らく元々はトレーナーのポケモン！」
サトシ「え？」
ビーン「あのキテルグマの右腕を見てください。」
サトシ「あれは…リボンか？」
ビーン「先ほどヌイコグマはペット用に人気が高いと言いましたが、力がとても強いため、世話しきれなくて逃がしてしまうトレーナーも多いのです。恐らくこのキテルグマも逃がされたヌイコグマが野生化し、進化したのでしょう。」
サトシ「そうか、逃がされたせいで人を信頼していないから…」
キテルグマ「グルオオ！！」
キテルグマは腕を振り下ろし、アームハンマーを放つ！
サトシ達はとっさに攻撃を避ける！
サトシ「こうやって攻撃してくる訳か！」
ビーン「この状況でキテルグマを攻撃したらさらに人間を信用しなくなってしまいます！だから…キテルグマの心に訴えます！キテルグマ！！」
キテルグマはビーンに向けてアームハンマーを放つ！
ビーン「くっ！」
サトシ「ヌメルゴン！」
ヌメルゴンはキテルグマの攻撃を受け止める！
サトシ「ヌメルゴンが攻撃を食い止めます！今のうちに！」
ビーン「…ありがとうございます！」
そしてビーンはキテルグマに想いを語る。
ビーン「あなたは人間を信用していないのですね。確かに身勝手な人間もいます。ですがあなたのことを大事にしてくれる人間だっているのです。さあ、一緒に来ましょう！」
キテルグマ「グルグルアアアア！！」
サトシ「まだ想いは届かないのか！？」
暴れまわるキテルグマ！キテルグマはきあいだまを放とうとする！
サトシ「ヌメルゴン！キテルグマを抑えてくれ！」
ヌメルゴンはキテルグマを抑えるが…その衝動できあいだまは天井に向けて放たれる！
きあいだまは倉庫天井に激突し…天井の一部が落下してきた！
ヌイコグマ「クウ？」
その落下先にはヌイコグマの姿が！
ビーン「危ない！」
とっさにヌイコグマをかばうビーン！
サトシ「まずい！りゅうのはどう！！」
ヌメルゴンはエネルギー波を落下物に向けて放つ！しかし…
サトシ(壊しきれない！？このままじゃ…)
キテルグマ「グルオオオオオオオオオ！！！」
キテルグマのはかいこうせん！凄まじいビームは残りの破片を粉砕する！
ビーン「キテルグマ…助けてくれたのですか？」
キテルグマ「グルル…！」
キテルグマは先ほどのように襲いかかろうとはしない。
ヌイコグマ「クー！クー！」
サトシ「どうやらビーンさんの想いが伝わったみたいだな！」
数時間後…エーテル財団ビルパラレルシティ支部
ビーン「これで護送は完了と…」
サトシ「ヌイコグマ達はどうなるんだ？」
ビーン「しばらくは財団の方で預り、今度はちゃんと世話をしてくれるトレーナーを探すつもりです。」
キテルグマ「グルオオオオ！」
キテルグマは財団ビルの側にある庭でゴーリキーとバトルしている。
ビーン「…あのキテルグマはかなりバトルジャンキーみたいなので、強いトレーナーを探さないとですね。」
財団職員「ビーンさん！書類の確認お願いします。」
ビルの中から財団の職員が走ってやってきた。
ビーン「さて…そろそろ次の仕事に行かないと。近日はありがとうございました。サトシ達のおかげでヌイコグマ達を保護できました。」
サトシ「いや、ビーンさんの頑張りがあったからだよ。」
ビーン「私もポケモンを保護するため当然のことをしただけです。では気をつけて帰ってください。」
サトシ「はい！じゃあまた！」
サトシはエーテル財団ビルを去っていく。
ビーン「さてと…仕事の続きをしないと。まずはケーシさんに護送が終わったと連絡を…ん？」
ビーンが持つホロキャスターに着信が入る。
ビーン「本部からだ…」
ビーンは通話を開始する。
ビーン「お疲れ様です。はい。…え？パラレルシティ総合病院にですか？…はい。分かりました。では明日そちらに向かうとこれから連絡します。」
その1時間後、パラレルシティ・総合病院。
そのトレーニングルームでリーリエはリハビリに励んでいた。
リーリエ「ふう…」
医師「リーリエさん。」
リーリエ「あ、先生。」
医師「ようやく走れるくらいまで体力が回復したようですね。体調も特に異常はありませんし、明日には退院できそうですね。」
リーリエ「はい。先生や私を助けてくれた皆さんのおかげです！」
医師「それと…もう一つお知らせがあります。」
リーリエ「何ですか？」
医師「君の保護者という人物から連絡がありました。」
リーリエ「…！」
その言葉を聞いた途端、リーリエの表情が変化する。
医師「保護者の方はこちらに来られないみたいですが、代理の人が明日こちらに向かうそうです。」
リーリエ「…」
医師「リーリエさん？」
リーリエ「あ、すいません。少し考え事をしていました。」
医師「…？」
リーリエ(まさか…財団はもうここに私がいるということを知ったのですか？このまま捕まる訳には…！)
そして白き少女はある決意をする。
